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2011/12/11 on air  「古典文学の面白さって何ですか?」          (guest)  黒澤弘光さん


心にグッとくる日本の古典


心にグッとくる日本の古典


黒澤 弘光、竹内 薫 他




(オープニング)

「こんばんは、岡田准一です。 今夜も始まりました 『Growing Reed』
この番組では、毎週 一つのテーマの専門家をお呼びして、徹底的に質問。
番組の終わりには “考える葦” として、
僕も、みなさんと一緒に、成長したいと思います。

今日のゲストは、筑波大学附属高校 非常勤講師の、黒澤弘光さん です。
黒澤さんは、筑波大学附属高校で、約40年間、国語教師として 古典を教え、
筑波大学では、講師も務められていた、古典教育の プロ。
2008年に 定年退職した後は、高校の国語教師に 古典指導の アドバイスをしたり、
大学で、古典教育法、古典教材論 などの講義をなさっているそうです。

まぁ、古典の授業 というと、わかりづらいとか つまらないとか、
マイナスな イメージを持つ人も 多いと思うんですが、
みなさんは いかがだったでしょうか。

僕も ですね・・・“も” って言った時点で、ちょっと バレちゃうかも しれないですけども、
古典は、難しかった覚えがあるんですよねぇ。
あの・・・まず、読み直すのに 時間がかかる。
一回、頑張って 読んでみようかな と思うけど 諦める、みたいな。

詩とかを見ても、わからない自分が悔しかったり とか。
100パーセント、この良さが わかってないんだろうな、この詩の・・・とかっていうのも あるので、
それは もう、なんか ちょっと、わかりたいな、っていうのがありつつ、
難しいな、っていうのが 今日の ポイントでは あるかもしれないですね。

今年 1月には、34年前に 黒澤さんの授業を受けている、という、
科学者の 竹内薫さんと、対談形式で 古典の魅力を伝える、
『心にグッとくる日本の古典』 を出版されたみたいです。
そのなかで、黒澤さんは、
“古典文学を読み解いていくことで、時代を超えた コミュニケーションが生まれる”
と、おっしゃっています。

生徒達が夢中になった 名物授業とは、どんなものなのか、
今日は、高校生に戻ったつもりで、黒澤さんの授業を受けてみたいと思います。

“古典文学の面白さって何ですか?” 

J-WAVE 『Growing Reed』
新しい一週間、最初の60分。 ぜひ、一緒に お付き合いください」



(曲)
『PENNIES IN A JAR』 NIKKI JEAN
ペニーズ・イン・ア・ジャー


岡田くん
  「もう、あの・・・黒澤先生の授業が、伝説の授業だった っていうのをお聞きして、
  あのー、なんだろう、野村萬斎さんとか、たくさんの方が・・・
  目から鱗 の授業をされてた、っていうのをお聞きしたんですけど」
黒澤さん
  「ありがとうございます。 ちょっと、分に過ぎた言葉なんですけど」
岡田くん
  「いやいや(笑) すごいらしいですよね。
  萬斎さんとかは もう、心酔して っていうか、なんか、
  ワー、スゲー! って なった、っていうのを聞いたんですけど」
黒澤さん
  「とっても喜んでくださる方と、
  やっぱり、古文は つまんないと思っていらっしゃる方、両方いて、
  いま その、前者の声が響いてるということだと思います」
岡田くん
  「いえいえ、すごい 人気のある・・・
  古典を 人気があるように教える って、なかなか こう、難しい イメージがあるんですよ」
黒澤さん
  「はぁ・・・」
岡田くん
  「古典 って、やっぱ 難しいなあ、っていう イメージが、
  僕の中でも、授業を受けてて あったので」
黒澤さん
  「教える側が ほんとに、いま 教えてる文章を好きか、面白いと思ってるか、
  ここが大きいと思うんですよ」
岡田くん
  「先生は、何で、古典が面白いと 思われたんですか?
  そういう先生が いらっしゃったんですか?」
黒澤さん
  「私の恩師は・・・もちろん、いらっしゃるんですが、
  実は 私は、スタートは 言語なんです」
岡田くん
  「へぇー」
黒澤さん
  「高校時代は むしろ、古文というより、古典文法に 惹かれましてね」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「それで、高一 が終わった 春休みですけれども、  
  文法のことを見に、市の図書館に行って 読んでて、
  ショッキングなことが わかったんですよ」
岡田くん
  「何 ですか?」
黒澤さん
  「 “奈良時代には、母音が8つあった” って書いてある。
  えっ? っていうか、
  私にとっては その頃、
  日本語の母音 っていうは、アイウエオ のことだと思い込んでましたから」
岡田くん
  「はい。 ア・イ・ウ・エ・オ ですよね。
  5つ、ですよね」
黒澤さん
  「ええ。 これと あと3つ って、何だろう と。
  そこから 今度は、日本語の音に 興味を持ち始めまして、
  ですから、スタートは、古典文学 云々、では なかったんです」
岡田くん
  「うーん・・・僕も、あるんですよ。
  昔の古典の 詩 とかを見て、
  すごい いいよ! って、こう、結構 年上の方がおっしゃることが、たまに あるんですけど、
  それを 100パーセント、理解できないんですよ。
  読み直さなきゃ いけないし、難しくて」
黒澤さん
  「はい」
岡田くん
  「なんか、ここで、すごく いい詩、って ありますか? いま、紹介できる・・・」
黒澤さん
  「えっと ですね、例えば、素朴に伝わってくるのは、
  万葉集 “防人歌” ですね」
岡田くん
  「万葉集・・・来ましたね、万葉集」
黒澤さん
  「ええ、防人歌」
岡田くん
  「防人歌」
黒澤さん
  「あの、防人歌は、奇跡と言っていいと思います。
  主に 東の国の、文字通りの庶民の歌をですね、記録したんですねぇ。
  というのは、あの頃ですね、文字に記録する っていうのは、大変なことなんですよ。
  ですから、いわば 貴族の歌を・・・皇族とか」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「記録するのは あり得ても、それこそ、庶民なんて、
  あの、身分制の中では、単なる 一意でしかないですから、
  それを記録してくれた。
  だから 素朴な、ほんとに 人間の情が素直に出てます」
岡田くん
  「どういう内容でしたっけ? 防人・・・」
黒澤さん
  「結局ですね、北九州へ、兵役で やられるんですよ。
  ところが、往復で死んでしまう人もいれば、向こうで 病死する人もいる」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「要するに、戦闘は無いけど、戦地に行くのと変わらない。
  みんなが帰って来るとは 限らない。
  だから これ、悲痛ですよ。
  悲痛なんだけど、人間の情が すごく表れてます。
  例えば、お父さん お母さん、恋人、子供、
  もう、恋しくてしょうがないんですね。
  それが素直に歌われてます」
岡田くん
  「例えば、どういう言葉が ありましたっけ?」
黒澤さん
  「そうですね、例えば こんなのがあります。
  『父母(チチハハ)が 頭(カシラ)かき撫で 幸(サ)くあれ“て”』
  ほんとは “と” なんですけど、訛ってましてね、訛りをそのまま書いてあるんです。
  『幸くあれて 言ひし言葉(ケトバ)ぜ 忘れかねつる』
  “言葉(ケトバ)ぜ” って、蹴っ飛ばせ みたいですけど “言葉ぞ” なんです。
  だから、そのまま 訳しますと、
  父母が、私の頭を撫でて、幸いでいろよ、と言ってくれた言葉が忘れられない、
  っていうんですけどね」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「訳してしまえば それまでなんですが、よく考えるとですね、
  防人に行く以上、もう、当時としては 大人なんですよ。
  当時は、13、14で、大人ですから。
  いま 例えばですね、二十歳 過ぎた 男の子の頭を、親が こう しますか?」
岡田くん
  「しないですね」
黒澤さん
  「しませんよね?」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「それは もう、親が 泣きたい思いなんですよ。 
  だから “かき撫で” を 撫でてと訳しても、本当には わからない」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「だから もう、この息子に会えないかと思うと、
  もう、大きくなった息子に、普通 しない仕草をして、
  一言、言えることは 『幸いでいろ』
  つまり、帰って来ないかもしれない。
  あるいは、お前が帰って来た頃、我々は、もう生きてないかもしれない。
  でも、お前は 幸せでいろ。
  それが もう、今でも忘れられない、って いうんですね」


(曲)
『LOVE』 JOHN LENNON
ジョンの魂 ~ミレニアム・エディション~


岡田くん
  「その・・・古典に。
  それが 歴史の面白さですよね」
黒澤さん
  「はい、その通りです」
岡田くん
  「文字だけではなく、その時代とか 環境とか、
  周りが見えてくると、相当 面白く感じる、っていう・・・」
黒澤さん
  「そうなんです、おっしゃる通りです。 ですから、歴史、
  何年に何があった、だけでは つまんないように。
  だから、よくある、つまらない と言われるのは、
  今とは違った 単語の意味を教えたり、
  文法を ああだ こうだと教えて、訳して、はい 終り。
  これで やっちゃったら、そりゃ つまんないでしょう」
岡田くん
  「うーん。 でも 今、授業 って、大体 そんな感じですよね」
黒澤さん
  「それは、大きく言うと やっぱり、
  入学試験 ってものを、頭に置かざるを得ないからでしょうねぇ」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「逆に 言うと、面白いと思えば、人間、勉強しますよね。
  だから、そういうことを教えるのも、もちろん 大事なんだけど、そういうことを教えながら、
  あっ、これがわかると、この歌なり 文章なりの、こういう思いがわかるんだ、へぇ~!
  と なれば、やっぱり、勉強好きに なってくると思います。
  とにかく試験問題 解くんだから これを覚えろ! って言われたら、
  それは やらんですよね」
岡田くん
  「そうですよね。 先生が、一番・・・」
黒澤さん
  「はい」
岡田くん
  「じゃあ、好きな古典 って、何ですか?」
黒澤さん
  「いろいろ あるんですよ」
岡田くん
  「シビレた 古典が、あるはずですよね」
黒澤さん
  「 『平家物語』 それから・・・」
岡田くん
  「平家・・・これから 『平家物語』 絶対、来ますからね」
黒澤さん
  「ええ、そうですね」
岡田くん
  「来年・・・ 『平清盛』 やりますもんね」
黒澤さん
  「はい。 で、たぶん、岡田さんも 日本史 好きだから・・・」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「平家のも、お好きだと思うんですよ」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「平家は、やっぱり いいです」
岡田くん
  「平家、いいですか」
黒澤さん
  「はい」
岡田くん
  「僕、実は、平家だけ、ちょっと 苦手なんです(笑)」
黒澤さん
  「あれ、そうなんですか? ハハハ(笑)」
岡田くん
  「平家、詳しくないんですよ。
  僕、戦国とか、そういうの詳しいんですけど」
黒澤さん
  「あー、なるほど」
岡田くん
  「平家だけは・・・ちょっと 勉強不足なとこが、
  実は、正直 あるんですよね」
黒澤さん
  「いえいえ。 あの・・・
  はっきり言って、こんなこと言うと、僕、袋叩きに遭うかもしれないけど、
  学校で教えてるから 余計 嫌いになる、っていう事実が あるわけですよ。
  これはねえ、我々 教師、ほんとに 痛切に、自分で反省しなくちゃ」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「そのために、かえって 古典嫌い 増やしちゃってんなら、
  お前、何のために 自分の ライフワークで やってんだ、っていうことに なりますよね。
  平家の中でも、岡田さんが ジーンと来るのも、きっと あります。 何人も あります」
岡田くん
  「ほんとですか」
黒澤さん
  「はい」
岡田くん
  「大体、『平家物語』 って・・・僕、読んでないんですけど、すいません」
黒澤さん
  「いえいえ」
岡田くん
  「あの・・・どういう、方向で書かれてるんですか?」
黒澤さん
  「えーとね、いくつか、実は あるんですよ」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「大きく言って “祇園精舎の鐘の声” のように、
  平家一門が、ワー っと興隆しましてね、すごい 権力 握って、
  20年か そこらで、もう沈んじゃうんですね。 滅んじゃう」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「この、いわば 栄枯盛衰 っていうのが、大きく言えば 一つ なんですがね、
  いろんな書かれ方がされてる。
  つまり、一人が作ったものじゃ ないんですよ」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「はじめは、どうも、信濃前司行長(しなののぜんじ ゆきなが) っていう 貴族の、
  まぁ、たいした ランクじゃないんだけど、
  これが作って、
  目の見えない、生仏(しょうぶつ)っていう 琵琶法師に教えた、って あるんだけど、
  これは、今ある 『平家物語』 の、何分の一 だと思います?
  この後、いろんな 平家の話が 新しく作られ、
  琵琶法師によって、語られたわけです。
  つまり、音楽なんです、あれ。 語り、なんです」
岡田くん
  「あ、音楽 なんですね」
黒澤さん
  「ええ。 弾き語り なんです」
岡田くん
  「はいはい、はい」
黒澤さん
  「そうするとですね、面白いことが起きるわけです。
  お客さんが、これは いい! また聴かせろ、と言ってくれるものは、残り、
  面白くないものは、消えていくわけです」
岡田くん
  「流れが 面白いものしか、残っていかない ということですね」
黒澤さん
  「面白い も、やっぱり、胸を打つ 面白さですね。 ゲラゲラ 笑う式 じゃなくて。
  だから ある意味では、長い時代の、いろんな価値観。
  時代によって、価値観も 変わりますし、人間も 変わってるけど、その中でも、
  その フィルターを通して 残ってきたもの、っていうふうに 見てもらったらいいと思います」
岡田くん
  「うーん。 やっぱり、あれですか、源義経 とか、
  源家の・・・源氏家の見方で 進んで行くんですか?」
黒澤さん
  「それがね、そうでもないんです」
岡田くん
  「あっ、そうじゃなかったら、見ようかな・・・」
黒澤さん
  「ここが 面白いんですよ。 
  ただ、悪役は ですね、平清盛とか」
岡田くん
  「清盛ですね」
黒澤さん
  「あるいは、平大納言時忠 とかね、
  要は、権力を笠に着て 横暴な振る舞いをした、というのが・・・」
岡田くん
  「圧政をしてた、っていう・・・」
黒澤さん
  「でも、これも 見方によるんですよ。
  岡田さんが さっき、来年の NHK、と おっしゃったけども、
  あの 清盛は、そうではないように 書かれると思います」
岡田くん
  「あっ、はい」
黒澤さん
  「何故か、っていうと ですね、
  ま、人の番組の、あれしても しょうがないんだけど・・・
  貴族から見れば、清盛たち 平家は、まことに 癪に障る、成り上がり者なんです。
  当時の貴族にとって、武士 っていうのは、
  要するに、はっきり言えば、雇い人の 切れっ端、みたいなもんです」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「それが いつの間にか、自分達の持ってる 行政機構を 全部、握っちゃったわけですよ。
  これは、いい顔するわけないです。
  だから、清盛 とかに対する目 というのは、貴族達の目で 書かれてますね」
岡田くん
  「まぁ、源氏側からも そうだし、っていうことですね」
黒澤さん
  「その 源氏が またね、必ずしも、良く 書かれてないんですよ」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「例えば、義経は、非常に 天才的な戦術家ですね」
岡田くん
  「はい、言われてますよね。 壇ノ浦、でしたっけ」
黒澤さん
  「壇ノ浦は、最後ですけども、
  その前の 『鵯越(ひよどりごえ)の坂落とし』 」
岡田くん
  「はい。 ひ、ひよ・・・」
黒澤さん
  「鵯越の」
岡田くん
  「あの・・・馬で降りて来るやつですよね」
黒澤さん
  「そうそう!
  鹿しか下りない、っていう所を ワーッ て 馬で下りて・・・
  ああいうところは、非常に 英雄的に書かれてるようですが、
  意外に ですね、義経に対しては、良くない あれなんです」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「例えば、那須与一 がですね、屋島の合戦で、
  平家軍が 戦い終わった後、船の上に こう、金の・・・
  金と、真ん中に 赤い 日の丸を書いた 扇を」
岡田くん
  「扇子・・・あ、扇 ですね」
黒澤さん
  「そうそう」
岡田くん
  「射る、っていう・・・」
黒澤さん
  「射るでしょ? あの、射るところまでは いいんですよ。
  よく、教科書にも あるんです」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「あれは もう、主な武士が 全員、見てるんだから、  
  武士としての面目を立てるか、落として 死ぬか、ってことに なるわけだけど、見事に やった。
  で、大抵 それで切れちゃうんだけど、その後ですね、
  伊勢義盛 という 義経の側近が、与一のそばに来るんです。
  とういのは、見事な腕を披露したもんだから、
  平家方も 源氏方も、ワーッ と褒めるわけです。
  敵ながら天晴れ と、平家もね。
  そのあと、平家の船の上に、一人の 年取った武士が現れて、
  舞いを舞い始めるんですよ」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「見事だった、という 舞いなんです。
  それをですね、伊勢義盛は、
  義経様の ご命令だ。 あれを射ろ!」
岡田くん
  「うんうん」
黒澤さん
  「殺しちゃうんですよ。 与一は」
岡田くん
  「那須与一が・・・」
黒澤さん
  「ええ、命令ですから。
  これは、アンフェア でしょ?」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「相手は、敵ながら天晴れ と言って 舞ってるのを、殺す手は 無いだろう。
  平家は、シンとしちゃうし、源氏も、
  半ばは、オーッ と言ったけど、さっきと同じように。
  半ばは、何も そこまで・・・
  そういう点でね、義経は ちょっと、後ろ暗いところがあるんです。
  ある 残忍さを持ってます」
岡田くん
  「うん・・・」


(曲)
『KILL FOR A DREAM』 BEADY EYE
Different Gear, Still Speeding


岡田くん
  「じゃ、古典の、あの・・・平家」
黒澤さん
  「はい」
岡田くん
  「源平合戦 というか・・・の中で、
  一番 面白い シーンは、どこなんですか?」
黒澤さん
  「えっと、どういう面白さが いいですか? 岡田さん。
  勇壮活発がいいか、それとも ジーンと来る方がいいか」
岡田くん
  「ジーン・・・まぁ、日曜の深夜なんで、ジーンと来る、
  明日も頑張ろう、みたいな(笑)中身がいいかな」
黒澤さん
  「そうですか。 戦闘シーンで ありますとね、
  きわめて有名なのは 『敦盛最期(あつもりの さいご)』 ですよね。  
  花のような美少年で、16~17歳かな? が、
  熊谷次郎直実 って・・・いま 高崎線の熊谷」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「あの辺りの、豪遊の武者に、首を取られちゃう。
  ただ、美しい 美少年が首 取られて、可哀想、っていうだけで、
  涙したんじゃないんですよ、当時の人は」
岡田くん
  「というと・・・」
黒澤さん
  「というのはですね、ご承知のように、義経の奇襲で 大混乱になりました、
  一の谷の陣地は」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「あの頃、平家の基本的な作戦は、柵を作っちゃってあるから、
  山から来る以外は、ほとんど来られないから、
  あとは もう、こっちが正面なんです。 柵の正面」
岡田くん
  「あの、下りてきた・・・山で下りてきた 戦いのやつでしたよね」
黒澤さん
  「そう。 あれは ほんとに 奇襲。 今の、コマンド部隊 なんですよ」
岡田くん
  「うーん。 日本語で言うと、決死隊 みたいなのですか。 70人ぐらいで 下りたんでしたっけ」
黒澤さん
  「と、言われています。 最大、ですね。 最大です。
  70騎はね、ほんとは 下りられなかったろうと思いますよ」
岡田くん
  「うーん。 ま、そこの、裏からは 来れないだろう、っていうので、
  裏で ガーッ と下りてきた、っていう話ですよね」
黒澤さん
  「そうです。 だから、実際問題は、
  義経の舞台は、攪乱して、柵の向こうの 範頼軍を入れることが主であって、
  彼らだけでね、平家を バッタ バッタ、やっつけたわけじゃないんですよ」
岡田くん
  「あの・・・周りを もう、囲んでいて、
  一個の山のとこだけは、もう 攻めて来ないから、っていう・・・」
黒澤さん
  「そちらは大丈夫だと思ってたわけです」
岡田くん
  「ねえ。 囲った先には、味方がいるわけですよね。
  だから、そこまで通した 穴を開けたかった、っていう」
黒澤さん
  「ある種、横合いから突っ込んで、そして 驚いてるうちに、
  とにかく、範頼軍を入れちゃう」
岡田くん
  「入れ込みたかったわけですね」
黒澤さん
  「そう、主軍が入って来なかったら、
  この ちっぽけな コマンド部隊じゃ、全滅ですよ」
岡田くん
  「うんうん」
黒澤さん
  「その時ですね、平家は、万一 混乱に陥ったら、
  沖合に軍船を浮かべてますから、
  軍船が助けに来て、主なやつを救って帰ってくのが 基本だったんです。
  で、敦盛は すでに、5~6反ばかり 行ってるから、相当、もう 海の中に、
  戦場を すでに離脱 済み だったんです」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「そこを 熊谷次郎 が、
  そこに いらっしゃるのは、立派な将軍とみえる、と。
  敵に背中を見せるのは 卑怯でしょう、お帰り下さい。 っていうんで 帰ったわけです。
  これが ですね・・・」
岡田くん
  「美少年が 戻って来たわけですね」
黒澤さん
  「そう。 普通なら、行ってもいいんですよ。 それだけ、距離があるんだから。
  その時、なぜ帰ったか。 大きく、二つ あって、
  一つは やっぱり、卑怯と言われて、背中を見せるな と言われて、
  このまま逃げるのは、プライドが許さなかった。
  だって、あれですよ、初陣ですから、
  自分に、そんな戦力 あるわけない、
  行けば 命が危ないぐらい、わかるわけだけど、その プライドが強かった。
  もう 一つはね、これ、僕の独断かもしれないけど、
  熊谷の呼びかけが、実に、礼に適ってる。
  『まさなうも敵に後ろを見せさせたまふものかな。返させたまへ』
  最高の敬語を使って、扇を広げて 招いてるんです」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「それは、礼を尽くした 呼び返しなんですよ。
  だから おそらく、敦盛は 応じてるんだろうと思う」
岡田くん
  「うーん・・・」
黒澤さん
  「そして 結局ね、熊谷も 実は、ショックなんです。
  熊谷は、まさか 少年と思ってないんですよ、呼び返した段階では。 背中しか見えない。
  立派な 鎧兜と、立派な馬。 これは、大物だ。
  で、呼んだら 帰って来た。
  組み討ちに なったら、もう あっという間に、
  もう、力が違いますから、あっという間に 組み伏せて、
  さあ 首を取ろう として、兜を跳ね除けたら、
  そこに いるのは、自分の息子と同じような 少年で、しかも、上品で 美少年で、
  これを殺すのか! っていう思いに なっちゃうわけですよ」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「熊谷は、目の前が 真っ暗になっちゃうんです。 しかもね、そのあと。
  当時の人達としては、平家琵琶を聴く人や、後々 それを読む人達は、
  ただ、美少年が殺されただけじゃなくて、
  逃げられたのに 敢えて、自分の誇りと、
  相手が礼を尽くしたら、こちらも礼を尽くす という、その態度。
  最後は ですね、熊谷の短刀が ここにあるわけですね」
岡田くん
  「頭の・・・顔の前に ある」
黒澤さん
  「顔の前にね。
  そして 熊谷が、あなた どういう お方ですか? って、聞くわけです。
  それからの返答が、すごいんですよ。
   『お前から 名乗れ』 」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「というのは、格下から名乗るものだ、って言うんです。
  こう、やられてて」
岡田くん
  「顔に・・・」
黒澤さん
  「そこで、名乗るわけですね。
  大したものじゃ ございませんが、武蔵野国の 熊谷の住人だ、と。  
  そうすると 『さては、汝に会うては名のるまじいぞ』 と。
  あ、それじゃ、お前には 名乗らない。
  っていうのは、格が違いすぎる って言うんですよ」
岡田くん
  「うんうん」
黒澤さん
  「とくかく、首、取れ。
  これで、熊谷が ジーンと きちゃうわけです。
  こういう体制になって、そこまでの誇りを持つ、と。
  これは助けちゃおう、と思うんですね。
  で、フッ と見ると、もう遅い。 周り中、源氏で いっぱい。
  そこで 熊谷は、すごく辛い決断をするわけです。
  いま、自分が助けても、他の奴に殺される。
  それなら、おいたわしい と思ってる自分が 殺す方がいいだろう、ということで」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「もう、逃がそうと思っても、できません。
  せめて、私が 手に かけて、後々の菩提を弔いましょう、って言うと、
  そんなことは どうだっていいから、早く殺せ。 お前にとっては、いい首だ」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「で、泣く泣く、首を取るんです。 こういうところに、ですね、
  ただ、死んだ、じゃないんです。
  どういうふうな 対処をしていったのか、と。
  そこに、人々は 涙したんですね」
岡田くん
  「うーん」


(曲)
『素晴らしい世界』 EASTERN YOUTH
感受性応答セヨ


岡田くん
  「恋愛物だと、どうなんですか、
  『伊勢物語』 とかも、恋愛物でしたっけ?」
黒澤さん
  「 『伊勢物語』 も、綺麗で いいですよ~」
岡田くん
  「そうですよね」
黒澤さん
  「どっちか っていうと、雅な 王朝の、っていうことに なるんですけども、
  ある種ですね、非常に 素朴な思いが よく出てます」
岡田くん
  「 『伊勢物語』 って、誰が作ったんです?」
黒澤さん
  「作者、わかんないんです。
  作者がね、幸か不幸か わかんないんです。
  幸か不幸か、っていうのは、実は、面白い問題が あるもんで、
  あれも、いくつかの出来方が、あるはずなんです。 それが合体してるんですけどね。
  『伊勢物語』 の中にですね、そこに紹介した 『梓弓』 なんていう話も あるんですが」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「夫が 平安京へ、貴族様のところへ 働きに行っちゃったまま、3年間、帰って来ない。
  妻は ずーっと 待ってるんだけど、
  だんだん 自分の、女としての 花の時期が終わっちゃう。 当時、早いですからね。
  で、悩みに悩んだ あげく、別な男に、今晩、
  この男は もう、長いこと 誠意を尽くして、プロポーズしてるんです。
  今と違って、民法が無いですから。
  で、今晩、あなたを迎えましょう、って約束した その日に、夫が帰って来る、っていう、
  すごい 劇的な話が あるんですよ」
岡田くん
  「その、3年待った方の奥さん、どうなったんですか?」
黒澤さん
  「結局ね、すっごく悩むんです。
  何も知らない夫が、3年ぶりに帰って来て、
  この戸を開けてくれ、って 叩くんです」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「開けられないわけです。 というのは、今晩、
  誠意を持って 自分に プロポーズ、何回も してくれた人に、OK 言っちゃった、っていうのと、
  これ、女性に・・・生徒に、
  この時の 女性の思い、どうだったと思う? って聞くと、
  すーごく複雑だ、と。
  一つは、夫が帰って来た。 ショックだ。 別な男性が 来ることになっている。
  もう 一つは、私は捨てられたんじゃない、という喜びも あったはずだ」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「次は、夫に 何か言いたい。 すぐ入れたくない。
  私、どんなに辛かったか わかってくれてるの? ということも言いたい。
  こんなのが全部、混じって、
  だから 最初、あなたが帰って来た 今日は、
  私、3年、辛い思いで待って、別な男を迎える。
  今晩、そういう日なのよ、っていう歌を出すんです。
  そうすると 夫は、しばらく 待って・・・そうか、と。
  私達が かつて したように、その男と 睦まじく暮せよ、と言って、去って行こうと するんです」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「そうすると 女は、なんで 私を引き寄せてくれないの?
  昔から、あなたを愛しているのに! って言うんだけど、男は行っちゃうんで 追っかけて行って、
  追いつかないで、走りに 走りに、走りに 走って、息絶えちゃう という、
  かなり、悲しい話 なんですよ」
岡田くん
  「美ですね~」
黒澤さん
  「はい、美です」
岡田くん
  「美が ある話ですよね(笑) うーん」
黒澤さん
  「これはね、大人の話」
岡田くん
  「うん、あぁ、そうですね」
黒澤さん
  「ある種、なぜ、
  じゃあ そんなに恋しいなら、はじめから開けろよ、なんていうのは 理屈ですよね。
  3年の切なさ、わかってるの? あなた、っていう思いと、
  男も、うーん、男だって ショックだったはずですよ。
  それを いろいろ押し殺して、嫉妬も あったろうし」
岡田くん
  「同じ 3年、って いっても、
  やっぱり、今と 違いますよね」
黒澤さん
  「まさに、それです!!
  これをね、とんでもない バカな話を つけてるんですよ。
  当時、律令の中に、戸令・・・戸籍の戸」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「3年 待ったら、再婚していいことに なってた、なんて、
  全くの 嘘っぱち のね、注が付けてある。 じゃ、まるで 女は・・・」
岡田くん
  「教科書に ですか?」
黒澤さん
  「教科書に です! だから、困るんですよ」
岡田くん
  「ほぉ~」
黒澤さん
  「それはね、私、怒って 書いたんです、それは」
岡田くん
  「うんうん」
黒澤さん
  「せっかくの、女の情をぶっ壊す。
  だって、時効を待ってたように 考えちゃうでしょう?」
岡田くん
  「違う意味に とれますよね」
黒澤さん
  「ねえ」
岡田くん
  「3年 経ったら あれですよ、って 書かれちゃうと、
  その 本当の良さ、っていうか・・・」
黒澤さん
  「消えちゃうんです」
岡田くん
  「消えちゃいますよね」
黒澤さん
  「ところが その、戸令 はね、こう書いてあるんです。
  すでに 結婚したといっても、男が僻地に行って、没落して 帰って来ないとき、
  3年経ったら、女は再婚していい、っていってるんだけど、
  男は、平安京に行ったんだし、没落もしてない。 関係ない条文ですよ」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「第一ね・・・岡田さんは 歴史 好きだから、おわかりでしょう。
  平安初期の 普通の庶民が、法律で動いてると思いますか?」
岡田くん
  「動いてないですよね」
黒澤さん
  「冗談じゃないですよ」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「そんなもの、入れちゃ いけないんです」
岡田くん
  「なんで・・・なんで 入ってるんですか?」
黒澤さん
  「たまたま、3年。 子供が無い。 これが共通だから。
  それをはじめてるのが、実は、私の 大学生時代に 発表された説ですからね、
  大昔の説 なんだけど、その頃は、すぐ反論されて、
  ケースが違うじゃないか、というんで 引っ込んでたんです。
  いつの間にか また復活しちゃって、教科書にまで 出てくる。
  そのために 女は、3年 待ってた、勘定高い女 に なっちゃうでしょ?」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「しかも、本文、見てもね、
  本文の運びを よく見てごらん、そうじゃないから、と言えるのは、
  “三とせこざりければ、まちわびたりけるに”
  それで、“ねむごろにいひける人に” と こう来るんです。
  3年 待っていたが、帰って来ない。
  待ちわびていた、辛い思いで 待っていた、と、こう続いてるんですよ」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「これが 逆でね、
  “まちわびたや、三とせこざりければ、ねむごろにいひける人に” と書いてあるのなら、
  3年 帰って来なかったので、新しく、プロポーズした男に、に なるけど」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「そういう順じゃなくて “3年 帰って来なかったので” を受けてるのは、
  “辛い思いで 待っていた” の所が 受けてるんですよ。
  そっから見てもね、そんな。
  それから 法律で・・・当時の律令 ってものが どれくらい、
  なぜ、戸令なるものに そういう規定があるか、ってことまで考えれば、
  こんなとこに 引用してくるものじゃないんです。
  それを引用しちゃったもんだから、
  生徒は みんな、それで読み、先生方 みんな、それで教えると、
  時効だから再婚した、っていう、とんでもない運びに なっちゃう」
岡田くん
  「うーん・・・」
黒澤さん
  「残念です」


(曲)
『UNCONDITIONAL LOVE』 椎名林檎
私と放電(通常盤)


岡田くん
  「古典が 本当に面白くなるのって、いま お話しを聞いてて」
黒澤さん
  「はい」
岡田くん
  「ちょっと 年を重ねて、いろんな 情 とか・・・なんだろう、
  時代の面白さとか、ほんとは この人 こういうことだったんだろうな、とか・・・」
黒澤さん
  「もちろん、それも あります」
岡田くん
  「経験が増えると、古典 て 面白そうだな、って」
黒澤さん
  「おっしゃる通りです」
岡田くん
  「歴史と一緒で、思うんですけど」
黒澤さん
  「それも、もちろん あります。
  初々しい 恋の ときめきとか、
  これは どっちかっていうと、若い子の方が わかるし、
  それから、いま、岡田さんが おっしゃったように、
  人の心 って、ほんとに、
  ほんとに、複雑 微妙な 味ですよね。
  『源氏物語』 の、ある 一節なんて・・・」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「これは、高校生に話しても、それは無理だろう っていうのが あります」
岡田くん
  「聞きたいですね、どういう・・・」
黒澤さん
  「例えば、六条御息所 という、完璧な、女神のごとき 貴婦人がいます。
  光源氏は、この人を ゲット しちゃうわけですよ」
岡田くん
  「はい。 『源氏物語』・・・」
黒澤さん
  「正式な奥さん じゃないので、周り中、あんな 超大物を・・・
  正式な奥さんは いますから、葵の上 というのが。
  どうするんだろう と思ってるうちに ですね、ま、いろいろ こう、
  フロイト も 真っ青、って 感じだけど、
  御息所は、自他 共に許す、完璧な 女性です。
  光源氏が、例えば、夕顔 なんていう女性を 寵愛してる。
  それは 御息所にとっては、嫉妬するはずなんだけど、嫉妬しません。
  嫉妬すること自体、相手を認めてますからね。
  御息所は 全然、そんなことは無視なんだが、それは 意識の上 なんです。
  意識の下の 御息所は、やっぱり辛い。 嫉妬するんですよ。
  そして、もののけになって、夕顔を取り殺しちゃうんです」
岡田くん
  「うん」
黒澤さん
  「次に、奥さんの 葵の上。
  これは、左大臣家の娘なので、さすがに、御息所も 嫉妬を抑えてるんだけど、
  ある ハプニングがありまして、これ “車争い” って いうんですがね、
  御息所の 牛車に対して、葵の上の お供のものが、無礼を働くんです。
  この時、御息所も、堪忍袋の緒が切れる。
  内心でね。 本人は、わかってないんですよ。
  そして、葵の上を 取り殺しちゃうんです。
  そのことを、光源氏は 察知しちゃうんです。
  寄坐(よりまし) という、ご祈祷の結果、
  寄坐という 巫女に宿った 生き霊が 光源氏に対して、ものを言い始める。
  その声、話し方。 御息所 なんですよ」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「そして そのあと、葵は 衰弱して、夕霧 っていう子供を産んで、死んじゃうんです。
  そうすると 源氏は、完璧な 女神のごとき 女性に、
  そういう おぞましい、生き霊という 嫉妬が宿ってた、って 知って、
  すっかり、嫌いに なっちゃうんです」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「で もう、全然、音信不通に なっちゃう。
  その間、御息所 は、すーごく 苦しむわけです。
  完璧な、誰もが 完璧と認める女性が、男性から 何も 言って来ない。
  で、このあたりはね、さらさらさらと書いてある。
  だから、さらさらさら って読んじゃうと、ほんとのとこは わからない」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「つまり、我々は そこを、想像しなくちゃ ならない。
  普通の、例えば 黒澤あたりが 女性に フラれれば、
  よくあることで、実に リーズナブルかもしれない。
  でも、完璧な女性が、自分が 男性に フラれた ということを まず、認めるまでに、
  どれくらいの 悩みや 苦しみが、ぐるぐる回るか。
  同じことを 何百回も 感じる・・・考えるはずですね」
岡田くん
  「うーん」
黒澤さん
  「あり得ない、でも これしかない、でも あり得ない。
  結局、自分は 源氏に捨てられた、と 御息所が認めるまでに、
  どれくらいの苦しみが あると思いますか?」
岡田くん
  「うーん・・・」
黒澤さん
  「我々が 想像を絶する、凄まじい苦しみを経たうえに、
  自分は 源氏に捨てられた。 次は、じゃあ、何故か? です。
  何故、自分が 源氏に捨てられるんだろう。 自分は、何も変わってない。
  そうすると 最後は、自分が生き霊になった という 噂が、事実である と。
  それ以外の理由が無い、ってことを また、何十回、何百回、
  そんなはずはない、そんなはずはない を繰り返した後に、認めざるを得ないわけです。
  そうするとね、こう書いてあるんです。
  “ まことに憂しと思すことこそありけめ と 知り果てたまひぬれば”
  この “果て” です、問題は」
岡田くん
  「果て・・・」
黒澤さん
  「地の果て の “果て” ですよ」
岡田くん
  「はい」
黒澤さん
  「 “まことに” っていうのはね “本当に” じゃない。
  “事実として” なんです。
  事実として、源氏さまは、私を憂し・・・嫌な女だ と お思いになるようなこと、
  つまり 生き霊・・・が あったんだろうと、
  “知り果て” ・・・最後の最後まで わかってしまわれた。
  もう、他の余地は無い、と。
  これが “果て” の意味です。
  この “知りたまひぬれば” は “おわかりになった” だけど、
  “知り果てたまひぬれば” は、
  それを否定して、他の可能性を必死で求めて、
  それは無い・・・と 認めざるを得ない。
  完璧な女性が、そこまで 自分の おぞましさを認める。
  したがって、自分は捨てられた。  
  この 苦しみと時間・・・どう思います?」
岡田くん
  「その、やっぱり、あの・・・なんだろう、
  本で読む 昔の人も、自分らと同じぐらい、
  時間を過ごしてる、っていう 感覚は、持てると楽しいですね」
黒澤さん
  「そうなんです」
岡田くん
  「一分 一秒 とか、一時間 とか 二時間 とか、一年とか。
  同じ時間だけ生きて 過ごしている、っていうことは、
  悩む時間も、相当 悩むかも しれないし、とか」
黒澤さん
  「そうです。 その間ですね、悩み、っていうのを 仮にですよ、
  片思いの苦しみを経験した人があれば、
  それが さっき、岡田さんの言った、人生経験なんです。
  片思いで、相手が 自分に つれない場合、どんなに辛いか。
  自分は やっぱり、彼女に嫌われてるんだ、と はっきり悟るまでに、どれくらい時間がかかるか、
  どれほどの苦しみ 悩み 時間・・・」
岡田くん
  「うーん・・・」
黒澤さん
  「こうやって考えていくと、
  だから、岡田さんの言われる通り、
  ああいうところは、いろんな経験してみなければ わかりません」
岡田くん
  「うーん」



(曲)
『DEEP DARK TRUTHFUL MIRROR』 ELVIS COSTELLO
スパイク<SHM-CD>



(対談が終わって、岡田くんの感想)

「さあ、ということで、今日は 黒澤さんと、古典について お話しをさせていただきました。
いやあ、ねえ、古典は もう、まぁ、ぶっちゃけ・・・昔に会いたかったですよね。
黒澤先生と、高校生のときに 会ってたら、
いま、また ちょっと 違う人生だったのかな、って(笑)しますよね。

でも ほんとに、古典はね・・・勉強したい っていうか、面白いですよね。
やっぱ、うーん、なんか、美しさ とか。
でもね、今から 古典を勉強するには ちょっと、根性いるな、っていう この・・・

やっぱ でも、歴史好きとしては、文字をね、ほんとに好きに ならないと、
にわか歴史好きに なっちゃってるところも、自分で あるので、
やっぱ、文字とか 文学とか、そういうのも知らないと、
ほんとに深く、歴史を知れないですよね、古典とか。

うーん・・・ぜひ ですね、みなさんも、
僕も、今日 もらったんで 読みますけど、先生が出した、
『心にグッとくる日本の古典』 っていう本をね、先生、出されてますから、
これを読んで、僕も ちょっと、古典・・・
古典マスター に なっちゃおうかな~」


(曲)
『I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU』 HERBIE HANCOCK FEAT.RAUL MIDON
Possibilities




(黒澤さんからの コメントは、ありません)


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