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2011/11/13 on air  「SFの魅力って何ですか?」                   (guest)  巽孝之さん


3・11の未来――日本・SF・創造力



3・11の未来――日本・SF・創造力


小松 左京、豊田 有恒 他



(オープニング)

「こんばんは、岡田准一です。 今夜も始まりました 『Growing Reed』
この番組では、毎週 一つのテーマの専門家をお呼びして、徹底的に質問。
番組の終わりには “考える葦” として、
僕も、みなさんと一緒に、成長したいと思います。

今日のゲストは、慶応大学文学部教授の、巽孝之さん です。

巽さんの専門は、アメリカ文学なのですが、SF評論家としても 活躍。
最近では “SF的 視点から 3.11 を見る” として 出版された、
『3・11の未来ー日本・SF・創造力』 の監修をなされました。
この本には、今年 7月に 亡くなった SF作家、小松左京さんの、
最後の メッセージが掲載されているとして、話題を集めました。
他にも、瀬名秀明さん、新井素子さん、押井守さん といった、
SF作家の方達 26名が、3.11 を受けて、いま考えていることを書いています。

SFの予言力 というのは、最近 よく言われていること なんでしょうかね。
SFの世界で描かれていることが、
今まさに 現実に なっている、っていうことは、よく言われますね。
それから、日本の アニメや マンガも、人気作の多くが SF作品、ということなんですけども、
そうなんですよねぇ。 なんか、あの、うーん、
僕の・・・より全然 上かな?
50代 40代の方とかは、ほんと SFが、すごい好きで、
好きで、って(笑)・・・よく聞くんですよね。

でも、僕ら って、
今の時代 って、なんか、ごちゃまぜになってる感じがして、
たしかに、子供の頃の携帯とかも、SF っていえば SFですけど、
考えられなかったことが身近になって、使いこなせる世代になると、
ちょっと、SF っていうのが こう、混ざってて、ピンと来ない っていうのか。
昔は、すごいなぁ と思っていたものが あるけど、
今じゃ、すごいなぁ って思う 技術 って、何だろう? っていうと、
昔みたいな興奮を覚えない、というか、
こういうのあったら、すごいよなぁ っていうのは、
もしかしたら、いま身近にある時代、なのかもしれないですよね。

でも きっと、SF って、触れると、
先を見通す力、ってのが 凄いんだと思うんですよね。
そこを どんどん、聞いていきたいと思いますし、
SFが 人々の心を掴むのは何故か。
SF作家とは、どういう人達なのか。

今夜は、“SFの魅力って何ですか?” というテーマで、
お話を お伺いしたいと思います。

J-WAVE 『Growing Reed』
新しい一週間、最初の60分。 ぜひ、一緒に お付き合いください」



(曲)
『DON'T LOOK BACK』 BOSTON
ドント・ルック・バック(紙ジャケット仕様)【2012年1月23日・再プレス盤】


岡田くん
  「今回はですね、そもそもから聞いていきたいと思いますけど」
巽さん
  「あっ、はいはい」
岡田くん
  「SF って、何ですか?」
巽さん
  「SFは・・・普通は、サイエンス フィクションの 略ですよね」
岡田くん
  「そうですよね」
巽さん
  「ええ。 だから それは、1926年に、アメリカ人、
  ルクセンブルク系の アメリカ人の、作家で 技術者でもあった、
  ヒューゴー・ガーンズバック という人が、
  世界初の SF雑誌で 『アメージング・ストーリーズ』 っていうのを創刊するわけです。
  そこで 彼が “サイエンティフィクション”と、最初、言ってたんですね。  
  それが だんだん “サイエンス・ フィクション” というふうに なって、
  それで 定着して、サイエンス・ フィクション と、いちいち言うのは 面倒くさいから、
  “SF” っていうふうに なった。 だから、略ですよね、そもそも」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「で、日本では、50年代の末に、早川書房が 『S-Fマガジン』
  これは 日本初の、成功した 商業誌ですね、
  専門商業誌を発刊しますが、その タイトルに、
  『S-Fマガジン』 の上に “空想科学小説誌”」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「だから、空想科学小説 というふうに、当初は 訳されてたんです。
  それが だんだん “SF” っていう、略号が こう、自走しちゃって(笑)
  わりと、SF っていうんで、なんだか みんな、
  イメージで捉えるように なっちゃった、っていう感じですよね」
岡田くん
  「いま、僕ら世代だと ちょっと、SF っていう言葉が、
  なんか、現実化してるから、なんか ちょっと こう、
  言葉が、ちょっと ぼやけてる感じがしちゃうんですけど」
巽さん
  「あー、そうですよね。 だから よく、現実が SF化した、とか 言われますけどね。
  それは、だから 昔は、SF っていうのは、
  あくまで空想科学だから、ちょっと遠いもので・・・」
岡田くん
  「どっから どこまでが、SFなんですかね」
巽さん
  「一応、20世紀の中で、特に 後半で、
  未曾有の SFブーム と言われたのが、1980年前後なんですね。
  もちろん、きっかけは 『スター・ウォーズ』」
岡田くん
  「うん」
スター・ウォーズ トリロジー リミテッド・エディション (初回限定生産) [DVD]
巽さん
  「 『スター・ウォーズ』 が あり、『未知との遭遇』 が あり」
未知との遭遇 ファイナル・カット版 (1枚組) [DVD]
岡田くん
  「 『宇宙戦争』 とか・・・」
巽さん
  「ええ。 あと 『ターミネーター』 とかね」
ターミネーター [DVD]
岡田くん
  「あー・・・」
巽さん
  「 『エイリアン』 とか、そこら辺が ドッ と 出て、
エイリアン [DVD]
  当時は、SF と名が付けば、なんでも売れる みたいな、そういう幻想まで あった。
  だから わりと、一つの マーケット だったですよね。
  だから その頃が、ブームは ブーム。
  ただ、もちろん、早川書房の 『S-Fマガジン』 は、1959年の暮れに 出てるわけですから、
  60年代から、いろいろ耕していって・・・」
岡田くん
  「うん」
巽さん
  「それで 70年が、やっぱり 一つの ピークで、
  最初の ピーク っていうか、
  大阪万博が あったんですね。
  これは、やはり そこで、かなり SF作家も関わったし、
  やっぱり、人類の未来を考えたわけですよね。
  だから “人類の 進歩と調和”
  その時に、未来を考える。 ないし、未来学 っていうのが、
  非常に ブームだった時代が、これは 間違いなく ある。
  だから やっぱり、SFの、最初の きっかけ というのは、
  人間が いかに未来を考えるか、っていう、
  そういう、未来をめぐる イマジネーション というのは、ありましたよね」


(曲)
『SAM LOWRY'S 1ST DREAM/BRAZIL』 KATE BUSH
Brazil


岡田くん
  「 SFが変わって来た、っていう流れは ないですか?」
巽さん
  「ありますね」
岡田くん
  「その・・・いろんな SFがあると思うんですよ」
巽さん
  「うん」
岡田くん
  「世界終末の・・・核兵器によっての世界終末 っていうのも あれば、その、なんだろう、
  僕らの身近な、例えば、携帯とかでも、
  タッチパネルで出来るなんて、昔だったら SF・・・」
巽さん
  「完全に SFですね。 そうそう」
岡田くん
  「だったのが、実際に なってきて、
  空飛ぶ車、とかも SFだし」
巽さん
  「(笑)」
岡田くん
  「そういうのが ワー って、
  21世紀は そんなのがあるんだろうなぁ って思ってた SF感が、
  ずっと、僕らの中では あったんですよね」
巽さん
  「ええ」
岡田くん
  「でも、なんか、最近のSF って、例えば、サイボーグだったりとか、
  サイボーグ って、ま 『攻殻機動隊』 とか、押井さんとかも そうですけど、
  なんか、脳に チップ埋め込んで どうのこうの、とか」
EMOTION the Best GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 [DVD]
巽さん
  「うん。 “サイバー パンク” って、言いますけど」
岡田くん
  「サイバー パンク って 言うんですか?
  DNA について調べていたりとか・・・」
巽さん
  「うん、そうですね」
岡田くん
  「ちょっと、体の中のことに入って・・・」
巽さん
  「バイオ テクノロジー とかね」
岡田くん
  「バイオ・・・細菌兵器とか」
巽さん
  「そうそう、そう」
岡田くん
  「そういうふうに変わってきてる感じがするんです」
巽さん
  「内部の方にね」
岡田くん
  「内部の方に。 SF っていわれるものを読むと、そういうふうに行ってる気がして。
  あとは もう、ファンタジー・・・」
巽さん
  「と、区別がつかないものも ありますよね」
岡田くん
  「つかないものも、出てきてる」
巽さん
  「だから 一応、SFの歴史として言うと、
  1926年に、ガーンズバック が、世界最初の専門誌を打ち立てた、というのが、
  これが ジャンルの始まり、というふうに考えると、
  最初は やはり、未来とか、それから 外宇宙ですね。 宇宙に出ていく、とか。
  そういうことが 非常に大きな モティベーションで、
  だから、SFが わりと、科学技術の進展を促して、
  それで、特に アメリカが SF大国だった。
  だから、アメリカの国家的な繁栄も 支えてる、みたいな、
  そういう イメージが あったわけですけど、
  しかし、SF っていうのは、大本は やはり、  
  1918年の、メアリー・シェリー の、
  『フランケンシュタイン』 から始まる、って いわれているので」
Frankenstein―フランケンシュタイン (ラダーシリーズ) (洋販ラダーシリーズ)
岡田くん
  「うーん。 あ、そうかぁ・・・」
巽さん
  「 『フランケンシュタイン』 というのは、人造人間でも あるし、
  ロボットとかね、サイボーグとか アンドロイドとか いわれるようなものの、
  起源みたいなところが あるんですが、
  『フランケンシュタイン』 は、メアリー・シェリー ですけど、その後、
  例えば、エドガー・アラン・ポー だとか、ジュール・ヴェルヌ、H.G.ウェルズ っていう、
  ここら辺は、ポー を除くと、ヨーロッパ なんですよね。
  だから、ヨーロッパの方の人達の 影響で、
  だけど こう、SFが ジャンルとして、あと マーケットとして確立したのが、
  アメリカだったんですが、
  そうすると、ヨーロッパの人達が、また、反感を持つわけですよ、非常に。
  アメリカの宇宙開発競争に役立つような SF、じゃないものを目指す、っていうので、
  60年代に、J・G・バラード っていう作家が・・・」
岡田くん
  「うーん・・・『クラッシュ』」
巽さん
  「いまや、我々が目指すのは、外宇宙ではなくて 内宇宙だ、と。
  だから、人間の精神の内部を目指すのが、
  それが 真のSFだ、っていうことを 60年代に言い始める、と。
  そこで 一つ、転換があるんですが、
  ただ、それは かなり、超現実的な ビジョンだったんですけど、
  それが 裏付けられるのが、80年代の、
  それは 私も、日本に輸入するのに関わった、
  サイバー パンク、っていう運動があって」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「これが、その海外編でも、ベストに選んでる、
  ウィリアム・ギブスン とか、ブルース・スターリング という人達が、
  マイクロ エレクトロニクス が進展すると、
  テクノロジー が 人間の肌の下に潜り込むようになった、というようなことを、
  スターリング は、言っています。
  だから、テクノロジー は、もはや、人間の外部に あるのではなくて、
  人間の肌の下に、もう すでに、潜入するように なってきた。
  その印象、っていうのは、先ほど、岡田さんが言った ね、
  非常に、どんどん どんどん、テクノロジー が 微小なものに なって、
  小さなものに なって、それで いろいろ、我々の現実を浸食してる、っていう イメージ。
  それが現代の、SFだと思うんですよね」


(曲)
『SPY BREAK(SHORT ONE)』 PROPELLERHEADS
マトリックス


岡田くん
  「先生が一番好きな、SFの時代 って、いつですか?」
巽さん
  「やっぱり、読み始めたのが 60年代ですから、ここでも 少し、
  SFとして 推薦してるのは、60年代とかが 多いんですが」
岡田くん
  「これ読んどけ、っていうのは、ありますか?」
巽さん
  「ええ。 これだけ読んどく、っていうのは、
  今回、用意して来たんですけれど・・・」
岡田くん
  「教えてもらっていいですか?」
巽さん
  「ええ(笑)」
岡田くん
  「絶対、読みます、僕」
巽さん
  「あ、そうですか」
岡田くん
  「アーサー・C・クラーク は、知ってるんですよ」
巽さん
  「 『2001年宇宙の旅』 のね」
決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)
岡田くん
  「そうですよね」
巽さん
  「あれの、原作者です。
  それで、『幼年期の終り』 っていうのは、これ、1953年で、
  これは、最近、新訳も出ましたけれども、
  『2001年宇宙の旅』 の、原型のような 長編小説です。
  だから やはり、人類は、単純に 猿から進化したんじゃなくて、
  そもそも、猿の段階で、エイリアンに 自分達の進化を操られてたんだ、っていう、
  そういう ビジョンが 『2001年・・・』 には出てきますけれど、
  それの原型が この作品の中に あるので」
幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))
岡田くん
  「これは、面白い・・・」
巽さん
  「絶対、面白いです。 お薦めです」
岡田くん
  「難しくないですか?」
巽さん
  「難しくないですよ」
岡田くん
  「これ、結構、聴いてる・・・女の子、多いんですよ」
巽さん
  「あ、そうですか(笑)」
岡田くん
  「(笑)SFは、女の子に・・・」
巽さん
  「(笑)」
岡田くん
  「読んでもらいたいですよね」
巽さん
  「絶対ね、 それは、そうです。
  これは、とっても読みやすいし、やはり、私なんかも、中学ぐらいで読んで、
  中学、高校ぐらいで 読む人が多いですね」
岡田くん
  「 『2001年宇宙の旅』 じゃ、ダメなんですか?
  やっぱ 『幼年期の終り』 の方が いい・・・」
巽さん
  「 『2001年宇宙の旅』 は、映画 観ると、わけわかんない っていう人、いるので」
岡田くん
  「はい」
巽さん
  「映画で 何が起こっているのか、というのを知るには、
  あの小説を読むと、いいと思いますね」
岡田くん
  「あー・・・」
巽さん
  「だから、むしろ・・・」
岡田くん
  「両方、見れば いいんですね」
巽さん
  「映画、観て、あ わかんない、っていう衝撃の方が 私は、
  今は大事なような気がするんで」
岡田くん
  「アハハ(笑)」
巽さん
  「(笑)それで、小説から行っても いいと思うんですよ」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「最初から読むと 『2001年宇宙の旅』 って、全部、説明されてますから、小説の中で、
  何が起こってるのか」
岡田くん
  「先生が衝撃 受けたの って、どれですか?」
巽さん
  「えーと、だから クラークの 『幼年期の終り』 の次に、
  スタニスワフ・レム の 『ソラリスの陽のもとに』 っていうのが ありますけど、
ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)
  これは、タルコフスキー が 『惑星ソラリス』 っていうので、映画化してて、
惑星ソラリス [DVD]
  その後、ソダーバーグ、っつったよね」
岡田くん
  「ソダーバーグ」
巽さん
  「もう一回、映画化してますよね。
  今度は 『ソラリス』 っていう、タイトルで。 これは・・・」
ソラリス (特別編) [DVD]
岡田くん
  「あぁ、あれか! 『ソラリス』 か! じゃあ、観てるか・・・」
巽さん
  「遠宇宙に行くと、二重太陽の中で、
  ソラリス という惑星では、海が知性体なんですね。
  それで、人間に いろいろ、コミュニケーションを取る方法が、人間の無意識に、中を読んで、
  特に、個人が こう、良心の呵責とかね、
  トラウマ と思ってるものを、実体化して 引き出すんですよ。
  そういう コミュニケーションの取り方をする。
  だから、ソラリスの海 自体が、巨大な エイリアン なんですね」
岡田くん
  「うん」
巽さん
  「だから、これは 私の、わりと 子供の時からの SFに対する夢と、あんまり変わらなくて、
  つまり、SFは、何が面白いか っていうと、よく、宇宙にはね、
  例えば、火星には 生命体は いない、とか、
  やっぱり、太陽系の中で、生命の兆しが ほとんど見られない、とか、そういうこと言いますけど、
  それって あくまでも、我々の、
  地球人側の、勝手に打ち立てた 生命の基準 ですよね。
  だから、我々の常識が通用しない、生命の形 っていうのは、あるかもしれない。
  ある惑星では、岩石が生命かもしれないし、
  それから、ある惑星では、海が生命かもしれない、っていうのは あるわけですよね。
  しかも、コミュニケーションを図って来る、と」
岡田くん
  「うん」
巽さん
  「それって、SFの面白さで、
  だから、我々の現実のルールを 逸脱しちゃうようなものが、
  この広い宇宙には あるかもしれない、っていう」
岡田くん
  「それがね、1961年に作られてますからね」
巽さん
  「作られてる。 これは、大変なものですよね。
  これは、ポーランドの作家ですけど、レム は。
  やっぱり、20世紀最大の SF作家の 一人、ですよね」
岡田くん
  「うーん・・・次は、フィリップ・K・ディック」
巽さん
  「これは 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
  っていうのを、敢えて、挙げたんですが、
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
  これは、映画の 『ブレードランナー』 の、原作です」
ブレードランナー ファイナル・カット [DVD]
岡田くん
  「わぁっ・・・そう言われると、ちょっと 見たくなっちゃいますね」
巽さん
  「(笑)」
岡田くん
  「男心には 『ブレードランナー』 って言われたら、ちょっと・・・見たくなっちゃう」
巽さん
  「あ、観ました?」
岡田くん
  「いや 『ブレードランナー』 は、だって・・・
  あ、この本は、申し訳ないです、読んでないんですけど、
  『ブレードランナー』 は、僕らの 永遠の・・・」
巽さん
  「永遠のね。 まぁ、バイブル・・・」
岡田くん
  「映画ですからねぇ」
巽さん
  「ええ(笑)」
岡田くん
  「中学生ぐらいの時に、観て・・・」
巽さん
  「やっぱり、衝撃」
岡田くん
  「衝撃的 でしたね。 いまだに 色褪せないですからねえ・・・」
巽さん
  「だから あれは、あの後ね、なんか、
  フルバージョン とかね、ディレクターズ カット とか、いろいろ出て、
  いろいろ これは、衝撃の展開なので。
  まぁ、映画の方では、レプリカント って呼ばれてますけども、
  これは やはり、特に 若い世代が読むと、
  一種の、人種問題のようにも読めるし、
  非常に、せつない話ですよね、これはね」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「アンドロイドには 一応、命の限りがあるので、
  それをね、どういうふうに改良するか、っていう問題もあるし。
  それから ちょうど、酸性雨が降り注いでる世界ですから、
  やはり そういう時に、生命を持った ペットとか、いなくなっちゃってるので、
  それで、電気羊 とか、電気で動く動物 っていう ペットを、みんなで愛玩してる。
  それから、アンドロイドも こう、別に、
  完全に、いわゆる ロボットとして作られてる、っていうよりは、
  亡くなった人間の記憶を そのまま、アンドロイドを作る時に、刷り込んでるわけですよね。
  だから、その記憶を 自分自身の体験として、アンドロイドが もう、持っちゃってるので、
  自分の意識としては、自分は 人間なのに、どうして? っていうような、
  そういう、ちょっと切ない話 ですね」
岡田くん
  「この辺の作品を こう、初めて、先生が読んだ時、どうだったんですか?」
巽さん
  「やっぱり、いろんな可能性があるんだな、このジャンルは、と思いましたよね」
岡田くん
  「あー、ジャンル として」
巽さん
  「ジャンル として。 うーん、だって、やはり こう、
  これは ひょっとすると、後で出てくる質問かも しれませんけど、
  いわゆる 文学 っていうのだと、あくまで 人間を描くわけですよね。
  で、人間の人生を描くけども、いわゆる SF小説、っていうのは、
  これは、人間が主人公じゃない場合の方が 多いわけですよね」
岡田くん
  「はい」
巽さん
  「人間が主人公じゃなくても、こんな面白い お話が出来るんだ、っていう。
  それから もう、視点が、人間ならざるもの どころじゃなくて、
  生命ならざるものが語っている、とかね(笑)」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「それから、時代そのものが主人公、みたいな作品も あるし、
  それから、我々の文明を支えてる エネルギー、そのものが 主人公みたいな、
  そういう形で フィーチャー される場合も ある。 だから それは、
  そういうことが出来る、っていうのは、やはり、
  20世紀の文学の、一つ、非常に大きい可能性だったんじゃないか、っていう・・・」


(曲)
『BLADE RUNNER』 VANGELIS
ブレードランナー


岡田くん
  「日本のSFの傾向、って あるんですか?」
巽さん
  「明確な違い っていうのは、やはり 日本のSFも、
  もちろん テクノロジー っていう点では、アメリカに学ぶとこが多かったと思いますけれども、
  やはり、小松左京さんを 一つの尺度にすると、
  小松さんの デビュー 長編 っていうのは、64年の 『日本アパッチ族』 っていう」
日本アパッチ族 (光文社文庫)
岡田くん
  「うんうん」
巽さん
  「これは、敗戦後の 大阪の、軍事工場の跡地ですね。 そこは、廃墟に なってる。
  廃墟に なってるんだけど、元軍事工場なので、
  鉄くずが いっぱいあるわけですよ。
  ただ、一応、敗戦後 そこは、普通は 入っちゃいけないんですけど。
  そこに、当時ほんとに、実在したんですね “アパッチ族” といわれてる、くず鉄泥棒が。
  そこの軍事工場跡に入り込んで、くず鉄を盗み出して、
  それを スクラップとして お金に換える、っていうことをやってた」
岡田くん
  「うん」
巽さん
  「ここまでは事実なんですけど、小松さんは、さらに そこを 一捻りして、
  戦後、鉄を食べて生きる、突然変異の人類が そこから生まれた、と。
  だから、くず鉄を盗み出すだけじゃなくて、鉄を料理して食べる
  それを 『日本アパッチ族』 っていう小説で書いてるんですけど、  
  その小説では、最後、その アパッチ族が 日本全体を乗っ取っちゃう」
岡田くん
  「うん」
巽さん
  「だから、食鉄人種、っていう、
  鉄を食べる人種、っていうのを そこで描いてるんですけど、
  これは 非常に、日本の 第二次世界大戦、
  “敗戦” というものを 徹底的に突き詰めて、
  敗戦 そのものを 非常に クリエイティブな、創造的な 力 にした。
  これは やっぱり、アメリカとかには、あんまり無いもので、
  アメリカSF などだと、やっぱり こう、テクノロジー に対する信頼、とか、
  宇宙に、どんどん どんどん、植民地を増やしていく とか、そういうものが多いし、
  自然も コントロールできる、っていうふうに考えるものが多いですが、
  日本の場合だと やはり、徹底的に 敗戦を経験してますから、
  だから、小松さん なんかは、
  人類は こう、強く生きて、サバイバルしていくんだ、という。
  小松さんは、一番 有名なのは 『日本沈没』 ですけど」
岡田くん
  「そうですね」
日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1)
巽さん
  「そういう、世界が終わる、とか、日本自身が終わってしまう、というのは、
  一見、絶望的だけど、にもかかわらず、人間には それを生き抜く、
  サバイバルする 力 が あるはずだ、っていうのが、小松左京の作品ですね」
岡田くん
  「サバイバルする作品、多いですよね、SF って」
巽さん
  「うん、そうですね、非常に。 だから、世界の終末が来て。
  終末が来て、っていうのが やはり、一番 シリアスに、全世界を覆ったのが、
  1962年の “キューバ ミサイル危機” の時代だったわけだから」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「だから あれは、キューバで、共産圏の ミサイルが装備されて、
  それが アメリカに向いてた、と。
  ほんとは、アメリカの軍部は、それを叩きのめしたかったわけですよね。
  でも、それを叩きのめすと、おそらく 報復攻撃に次ぐ 報復攻撃で、
  全面核戦争に なって 世界は終わるだろう、というふうに言われてたので、
  あれは あの当時の、ジョン・F・ケネディ大統領が、
  懸命に、ソ連の フルシチョフに電話して、
  フルシチョフから、ガンガン怒鳴られながら(笑)
  なんとか その危機を収拾した、という、そういう経緯があったりします。
  だから、60年代の最初 っていうのは、非常に テクノロジー が発展してると同時に、
  まさに、そのテクノロジー で、世界が終わっちゃうかもしれない、っていう、
  そういう危機感も あった」
岡田くん
  「じゃあ、SFの世界 っていうのは、
  現実の世界と、やっぱり リンクしてる、っていう・・・」
巽さん
  「うん、元々してますよね。
  だから、SFの定義 っていうのは、いろいろ あるんですけど、私が 一番、納得してる定義は、
  人間の理性が生み出したものが、
  いつか、人間の理性を離れて、自走しちゃう、
  勝手に、走りだしちゃう、っていうことを 意識した文学、っていう。
  これは、日本のSFの育ての親で、柴野拓美さん ていう方が いらっしゃるんですけど、
  その方の 定義なんですが、
  それは 私が、いま一番、納得してる 定義で 」
岡田くん
  「うん」
巽さん
  「だから、人間は 一応、基本で、いるわけですよ。
  で、わかりやすく言うと、人間が テクノロジー を生み出します。
  だけど、その テクノロジー が いつか、
  人間の コントロールを外れちゃう、っていうことが・・・」
岡田くん
  「うん。 暴走するんですね」
巽さん
  「暴走することも ある。
  それは、3.11 の後だと、特に そういうことを感じますけど、
  ただ、単純に、自走する、っていうことで、
  例えば、コンピューター が、いつか こう、人工知能に なって、
  人間を圧倒していくかもしれない、っていう、そういう シナリオも ありうるわけですよね」


(曲)
『インナーワールド』 サカナクション
GO TO THE FUTURE


岡田くん
  「昔のSF って、なんか、現実に なっていってる、て感じが ちょっと、あったりしますよね。
  物とか・・・」
巽さん
  「うん、だから、もう完全に、昔、遠かった テクノロジー が、  
  先ほど 言ったように、サイバー パンク 以後 もう、  
  人間の皮膚の下に、テクノロジー が入ってるんだ、という世界に なったから」
岡田くん
  「うん」
巽さん
  「いや、現実になった、って 言い方をすると、わかりやすいのは、
  実は いま、我々が 携帯電話 その他で、一番 恩恵を被ってる、衛星放送ですよね。
  衛星放送の テクノロジー っていうのは、実は、この トップにある、
  アーサー・C・クラーク が考えた」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「この人は、1945年に 考えて 『地球外中継』 っていう、エッセイまで書いてる。
  それで、どういうふうにしたら、衛星を使って 電波で繋がることができるか、
  っていうようなことを もう、すでに書いてるわけですよね。
  で、彼は、その エッセイで、その発想の 特許を取らなかった、っていうのを、
  後で、非常に 悔んでいましたけども」
岡田くん
  「そうですよねぇ。 でも、そういうのが あるから、作る側も、
  こうやったら、もしかしたら 出来るかもな、って やってみて、
  研究が、そっちの方向に 進んで行って、いつか出来るようになる、っていうことが・・・」
巽さん
  「だから、1945年には、まだ 空想の段階だったんですけど、
  ほんとに、そっちの方向に 行っちゃった」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「ここで、だから 驚くべきなのは、
  ここには、小松左京さんの ベストでは 『復活の日』 しか 挙げてないんですけど、
  実は、私が大好きなのは、彼の、1968年~69年の、
  『継ぐのは誰か?』 っていうね、そういう 長編小説があって、
  これは、南米の、とある部族の中に、いわゆる コンピューター ネットワーク に、  
  先天的に、何もしなくても アクセスできちゃう、っていう、
  そういう生理機能を備えた人類がいる、という、そういう前提の物語なんですよ」
継ぐのは誰か? (ハルキ文庫)
岡田くん
  「うん」
巽さん
  「今の、インターネット の 起源の、アルパネット とかって、
  ちょうど、60年代の末に、ようやく アメリカで、
  試験的に使われ始めたばっかりで、その時に、こう、
  全世界の コンピューター ネットワークに、直接 アクセスできる 人類、っていうのを、
  超人類、っていうのを・・・それを “ホモ・エレクトロニクス” と、いうふうに、
  小松さんは 呼んでるんですけどね、電波人類、っていうのを。
  そういう、超人類を構想をしちゃった、ってうのは、
  これは 単純に、発明とか 発見というよりも、
  発想の偉大さ、だと思うんですよね」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「やはり、3.11 が起こった時に、
  多くの SF関係者が連想したのが、小松さんの 64年の小説、
  『復活の日』 なんですね。
復活の日 (ハルキ文庫)
  これは、ウイルスが世界に蔓延して、一種、風邪の症状をきたすんですね。
  実際は、その ウイルスは、大量破壊兵器だったんですね。
  それが漏れて、風邪が蔓延する。
  だけど それによって、米ソの冷戦が エスカレートして」
岡田くん
  「うん。 その時代、ですもんね」
巽さん
  「その時代ですから・・・もろに、その時代。
  だから、ソ連からの 何かの、先制攻撃じゃないかと思った アメリカが、
  いってみれば、核兵器の自動報復装置の、スイッチを入れちゃうわけですよね。
  で、スイッチを入れたところに、ちょうど アラスカで、大地震が起こるわけですよ」
岡田くん
  「うん」
巽さん
  「大地震が起こったら、自動報復装置の コンピューターが、
  それを 核ミサイルによる攻撃だと、誤読するわけですよ。
  謝って解釈して、それで、核ミサイルが発射されてしまって、
  そうすると、当然、報復が来て、全世界が滅ぶ、っていう、そういうものですけれども、
  この作品を やっぱり、3.11 の後に、連想した人が 非常に多かったのは、
  やはり、普通の ウイルスとか、それから 地震とかは、天災ですけれど、
  自然災害としての天災 だけれども、
  それが、人災としての テクノロジー の暴走に 連動しちゃう、っていう、
  それは、小松さんが すでに書いてたよね、っていうふうに、
  みんな、思い出しちゃったわけですよね」
岡田くん
  「うーん」
巽さん
  「それが しかも、1964年に、そういう シナリオを書かれてる、ということですね」
岡田くん
  「あのー、今の時代の中で、SFや・・・
  SFが出来ること、って」
巽さん
  「SFは、だから、すでに こういう、いろんな未来の姿を 作って来たわけなので、
  これから、っていうよりは、SFが蓄積してきたもの、っていう、
  すでに、我々の世界を作ってきたものが、
  SFの イマジネーションだった、というふうに、私は思っています。
  だから、それを もう一度、再検証してみても いいんじゃないかと思うんですね。
  つまり、世の中には、いわゆる 予言 というかね、
  世界は こうなる、とか、そういうふうに断言する人達も いるんですが、
  だけど、SFの場合は、フィクション という形をとって、その中に、
  膨大な フィクションの中に、一抹の 真実を入れてるわけですよね。
  だから、その真実 っていうのは、一種の 洞察力みたいなもので。
  日本SFの場合は、過去 50年ですね、
  欧米を入れると、100年ぐらいの歴史が あるわけですけれども、
  そういう、物語の 力 というのを 馬鹿にしない、というか、
  そういう心構えが 大事じゃないかな、というふうに 思うわけですね」


(曲)
『NUMB』 U2
ZOOROPA



(対談が終わって、岡田くんの感想)

「さあ、ということで、巽さんと お話しをさせていただきました。
いやぁ、ねぇ、SF。
大丈夫でしたかねぇ 今日は、女性の方、
ついて来れたかなぁ、っていうのも ありますけど(笑)

ねぇ、SFは でも、うーん・・・
ま、でも、身近なんですよね。 
でも、SFじゃない作品 探せ、っていう方が、どっか難しい気もするぐらい、
SF って、なんか、ちょっと ちっさな事でも、SFが入ってたら、SFに なるのかなぁ。
なんか、先生に、帰り際に、
『SP』 って、SFですよね? って 言われて、
あっ、そうなのか、と・・・アハハハ!
あれ SFだったんだ、って、ちょっと思ったんですけど、僕はね。
あの・・・SFとして、やってなかったから。
でも まぁ、見え方とか、言いようによれば、SF。
なんか、違和感を感じて、ウン、っていうね、感じることが できるとか、
フォトグラフィック メモリー、つって、見たものを覚えれる とか、そいういうのも。
ま、それだけが入ってたら、SF っていう意味だったら、
結構、SF って 広いな、って思うし・・・なんだろう、
でも、エンターテイメント ですからね。

ぜひ、なんか、先生がね、えーと、SF推薦作 っていうことで、
さっきも ちょっと、紹介しましたけど、
いろいろ教えてくれてましてですね。
えーと、じゃ、僕が 気になるのだけ・・・
僕が 読もうかなぁ と思ってるのだけ、ちょっと 挙げますね。

えー、ロバート・A・ハインライン 『夏への扉』
タイムトラベル物、みたいですね。
夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

あと、レイ・ブラッドベリ 『太陽の黄金の林檎』
読んでみようかな・・・
太陽の黄金の林檎 (ハヤカワ文庫NV)

あと ですね、うーん、
星新一 の 『ボッコちゃん』
これも、読んでみましょうかね。
ボッコちゃん (新潮文庫)

ま、そんなとこで、みなさんも ぜひ、
今週中に、ぜひ SFを 一つ、読んでみてください」



(曲)
『時をかける少女』 松任谷由実
VOYAGER



(巽さんからの コメント)

「ちょっと 重要なのは、SFの中で、タイムトラベル っていうのがあるんですね、時間旅行。
いま 我々が、当たり前だと思ってる 世界を、裏返しに見る、っていう。
それは 仮に、それが 倫理的に、どのようなものであろうと、
我々の イマジネーションの自由、ないし、言論と表現の自由 として、
やっぱり、担保しておくべきものではないか というふうに、そいうふうに思ってます」

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